台湾有事が起こる直前に確認できるかもしれない「前兆現象」を、過去にあった武力衝突を例に紹介します。
台湾有事の前兆現象
ロシアによるウクライナ侵攻などを例に、台湾有事の前兆現象として発生するかもしれない事態を紹介します。
関係各国から警告が発せられる
各国は様々な諜報活動により、情報を収集しています。2023年10月に起きたハマス等によるイスラエルへの攻撃は事前に察知出来なかったとされていますが、2022年2月のウクライナ侵攻は1ヶ月以上前から、米国政府などが侵攻を警告していました。
緊迫するウクライナ情勢についてジェイク・サリヴァン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は11日、ロシアは「いつでも」ウクライナを侵攻できるだけの部隊配備をすでに完了しており、ウクライナ国内にいるアメリカ人は48時間以内に退避すべきだと述べた。
BBC 米政府、ロシアのウクライナ侵攻いつ始まってもおかしくないと警告
実際にウクライナ侵攻が起きたのは2月22日ですが、米国政府はその1週間以上前から自国民に退避を呼びかけていたことになります。
各国の軍隊の動きが活発になる
ロシアによるウクライナ侵攻の直前、ロシア軍はウクライナ国境付近に軍隊を集結させていました。報道によれば10万人規模とされており、米政府が「ウクライナへの侵攻がいつ始まってもおかしくない」などと警告していました。それに対しロシアは「ウクライナへ侵攻する意思は無い」として、こうした一連の行動を大規模軍事演習の一貫であると主張していました。
軍隊以外にも、例えば戦闘の発生される地域で普段は見られない外国人の姿が急増するなどの現象も想定できます。
虚偽の爆破予告が相次ぐ
ウクライナ侵攻の約1ヶ月前から、ウクライナ各地の公共施設に対する匿名電話やメールによる爆破予告が多発しました。多くは虚偽の通報で、実際に爆発物が発見されることは稀だったとされていますが、これもロシアによるハイブリッド戦争(非軍事的な手法を織り交ぜた戦争)の一貫であると指摘されています。
偽情報が拡散され、混乱が生じる
一つ上で紹介した虚偽の爆破予告以外にも、戦闘が開始する直前の時期に様々な虚偽情報はSNSなどで頻繁に拡散されるようになる可能性が指摘されています。戦闘の相手国に社会的な混乱を生じさせることで、戦闘を有利に進めようとする作戦です。SNSはもちろん、場合によってはテレビや新聞等でも偽情報が拡散される恐れがあります。
SNSで偽情報を拡散し、相手国の諜報活動に自分自身が加担してしまうことが無いように注意を払う必要があります。
小規模な武力攻撃が発生したとする情報が流れる
ロシアによるウクライナ侵攻が本格する約1週間前、ドンバス地域(2014年の侵攻によりロシアが占領していた地域)で戦闘が増加していました。
また、開戦の数日前にはロシア国内にあるロシア安全保安庁の施設がウクライナにより攻撃を受けたと、ロシアが発表しています。この件についてウクライナ側は否定しており、ロシアによる偽旗作戦(敵国側の攻撃であることを偽装した自作自演)である可能性が指摘されています。
サイバー攻撃の多発
近年は武力による攻撃だけでなく、サイバー攻撃の脅威についても懸念が高まっています。
ウクライナ侵攻の際にも、本格的に戦闘が開始した翌日などにウクライナの政府や議会、銀行のウェブサイトがDDoS攻撃(大量のアクセスを与え、サーバーをダウンさせる攻撃)がありました。
2022年8月には米国下院のペロシ議長が台湾を訪問するタイミングで、台湾の駅や台湾内のセブンイレブンに設置されたモニターがジャックされ、ペロシ議長を批判するようなメッセージが表示されるという事件がありました。この件では中国企業製のソフトを使用したサイネージ(デジタル看板)のシステムに何者かが不正にアクセスしたと指摘されています。このほかにも、国立台湾大学や台湾の外務省、国防省などのサイトがサイバー攻撃により書き換えられるという事態が発生しています。
一定の前兆現象が見られる可能性は高い
2023年10月に起きたハマス等によるイスラエルへの攻撃では前兆現象は見られなかったと言われていますが、台湾有事ほどの規模の武力衝突では前兆現象が見られる可能性が高いと言えます。戦闘の規模は小さなものではないため、兵士の移動などが大規模に発生するため全てを隠密に行うことは困難だからです。
したがって、上で紹介したような「前兆現象」が見られない限りは、日常の生活を継続して何ら問題はないと言えます。戦闘が懸念される地域への訪問を控える必要も無いと言えます。