台湾有事が発生すると日本がエネルギー不足に陥る理由

台湾有事が現実のものとなった場合、日本はエネルギー不足に陥る危険性があります。なぜエネルギー不足が発生するのか、その理由を解説します。

台湾有事で日本にエネルギー不足が発生する理由

エネルギーの輸入に支障が生じる恐れ

日本はエネルギー(原油、石炭、液化天然ガス)のほぼ全量を船舶による輸入に頼っています。台湾有事が日本の周辺で、あるいは日本の領域内も対象として発生した場合、船舶による輸送に重大な支障が生じる恐れがあります。

原油タンカーを狙った直接的な攻撃が発生しない場合でも、戦闘地域では貿易保険を適用できない事態が発生する可能性もあり、直接的な脅威が及ばない場合でも輸入に支障が生じる恐れがあります。

アキレス腱は2週間で在庫が尽きる液化天然ガス

船舶による輸入に支障が生じた場合、最も懸念されるのが液化天然ガスの調達です。

国内備蓄量
石油約240日分
石炭約28日分
液化天然ガス(電力用)9日分
液化天然ガス(都市ガス用)15日分

上記は資源エネルギー庁の資料などから作成した、エネルギーの国内消費量に対する国内在庫・備蓄量の水準です。

石油に関しては200日分以上の在庫・備蓄が確保されているのに対し、液化天然ガスについては約2週間分の在庫しか無いため、有事の発生により輸入が滞る事態が発生した場合、まず始めに液化天然ガスの在庫が尽きることが分かります。

液化天然ガスの在庫が尽きた場合に起こること

電力不足が発生する

2021年度の日本国内の発電量の34%を天然ガスによる火力発電が占めています。液化天然ガスの輸入が尽きると、まず大規模な電力不足が発生することが懸念されます。約3割の発電所が稼働できない状況となるわけです。計画停電の実施は避けられないでしょう。

電力需要が少ない春や秋であれば影響は少なく済む可能性もありますが、電力需要が大きい夏・冬の時期にこのような事態に陥った場合、節電による努力だけでカバーするのは極めて困難と言えます。

都市ガスの供給が停止する

都市ガスの主原料は液化天然ガスです。千葉県などの一部の地域では国産の天然ガスを原料としている地域も存在しますが、多くの地域では輸入された液化天然ガスから都市ガスを製造しています。

輸入が停止し液化天然ガスの在庫が尽きた場合、都市ガスの供給が停止します。

大規模な工場やビルでは都市ガスを燃料とした自家発電設備を設置しているところがあります。電力不足が発生した場合、そのような自家発電設備による都市ガスの消費量が増加する可能性が考えられるため、想定より早く在庫が尽きる可能性もあるでしょう。

「ガス不足」の可能性は想定しておくべき

国内外のシンクタンクの試算では、台湾有事による戦闘を2週間から1ヶ月程度としているものが目立ちます。

ですが短期間で戦闘が終結したケースを想定しても、液化天然ガスの国内在庫が尽き、電力供給と都市ガスの供給に支障が出る危険性は低くありません。「ガス不足」を想定した対策を検討する必要があると言えるでしょう。